いよいよ来週で2月も終了。
当事務所としても、
2月中に終了させないといけない法人系の仕事がほぼ終了したので、
3月15日が申告期限である確定申告に経営資源を集中しないといけません

。
そして、
多くの人が確定申告を意識する時期になると、
必ず出るのが、
脱税摘発ニュースである

。
脱税摘発ニュースを世間に流すことによって、
国税庁が、
「これから確定申告の時期ですが、
所得を正しく申告しないと、
あとで後悔することになりますよ」と、
マスコミを通じて広報をするというわけです

。
さて、
今年の確定申告時期における国税庁の生贄が発表されました。
クレディ・スイス証券社員、100人超が申告漏れ 20億円(日本経済新聞)
100人で20億円ということは、
1人当たり2000万円。
外資系証券会社においては、
妥当な金額でしょう

。
国税庁としては、
「海外での所得も捕捉できますよ。
正しい申告をしないと、
あとで後悔するから正直に申告してくださいね。」
というメッセージなんだと思います

。
もっとも、
この記事をお読みになった人の中には、
「なぜ八田氏のみが、
所得税法違反容疑で告発され、
他の社員は、
告発されなかったのか?」と疑問に思う人がいると思います。
ストックオプション(新株予約権)に関する税金は、
原則として、
次の2段階で課税されます。
まず、
ストックオプションを行使して、
株式を取得した段階で「給与所得」としての課税が実施されます。
そして、
その株式を売却した段階で、
株式の「譲渡所得」に対する課税が実行されます。
なお、
税法が定める一定の条件に合致すると、
第1段階での株式の取得時における給与所得としての課税は行われずに、
第2段階で当該ストックオプションを行使したことによる株式を売却した段階で、
第1段階での利益を含めて、
一括して株式の譲渡所得として、
課税を行います。
ここで、
簡単な説例をみることができます(tabisland)。
では、
どちらが納税者にとって、
得なのでしょうか?
回答は、
高額所得者にとっては、
一括して、
株式の譲渡所得として課税をされたほうが得です。
なぜなら、
株式の譲渡所得は、
分離課税だからです。
株式の譲渡所得は、
給料などの所得とは、
別個で計算と納税が実施されます。
現在の税率は、
上場株式で10%(うち地方税3%)、
非上場株式で20%(うち地方税5%)です。
詳細は、
ここ(国税庁)を見てください。
つまり、
所得税の税率が、
30%以上の人でも、
分離申告ならば、
最大で20%の税率でOKということになります。
もっとも、
税制の定める条件に合致をしない場合のストックオプションは、
ストックオプションを行使して、
実際の株式を入手した段階で、
給与所得としての課税が行われます。
つまり、
本人には、
お金が入金がされないにもかかわらず、
課税のみが実行されるということで、
「納得感」のない税制だと思います

。
さらに、
ストックオプションを実行して、
株式を購入したのちに、
株価が大幅に下落して、
売却をすると、
売却損が生じてしまう場合については、
含み損となるので、
「納得感」が「絶望感」に変わります

。
そうすると、
正しく納税して、
国に貢献しようという意識は、
希薄になります。
つまり、
「納得感」のある税制を構築することは、
すごく重要という話になります

。
上記の日本経済新聞の記事を読むと、
クレディ・スイス証券の社員の多くは、
スイスなどの証券会社の取引口座でストックオプションを行使して株式を取得したが、
日本の税務当局に「給与所得」として申告しなかったと書いてあります。
つまり、
今回のクレディ・スイス証券のストックオプションは、
税法に認められたストックオプションではないので、
ストックオプションを行使して、
株式を取得した段階で、
「給与所得」として確定申告をしないといけなかったのに、
確定申告をしていなかったので、
税務調査が実施され、
修正申告をすることになったと読めます。
脱税であるという事実を認識したうえで言えば、
クレディ・スイス証券の社員にしてみると、
「私は、
ストックオプションを行使して株式を入手しただけで、
まだ儲かっていないのに、
なんで税金を支払わないといけないのか」と、
文句の一つでも言いたいのではと、
予測されます

。
さらに、
このストックオプションを行使して取得した株式を売却しないで保有し続けて、
リーマンショックで大幅に株価が下落し、
現時点では、
含み損状態で、
売却すると損失が確定してしまうならば、
「納得感」がないどころか、
「絶望感」が全身に充満することになります

。
なお、
Reuters(ロイター)の日本語サイトで、
クレディー・スイス社の株価を調べると、
2007年の最高値と比較すると、
現在の株価は、
約50%です。
「絶望感」の可能性が非常に高いですね

。。。
なお、
先ほどの日本経済新聞社の記事で、
所得税法違反で告発された八田氏は、
ストックオプションを行使しただけでなく、
売却もして、
その利益を申告していなかったと書いてあります。
つまり、
修正申告をして、
無罪放免となったか、
または、
所得税法違反で告発されるかの境界線は、
今回は、
売却して利益を得ていたかどうかだったということになります。
別の視点で言えば、
所得税法違反で告発されなかったが、
含み損のある自社株を持つ人生と、
所得税法違反で告発されたが、
株式で売却益を得た人生のどちらが良いのかということになります

。。。。
究極の選択ですね

。
正しい申告・納税をしましょう

。
Posted by cpiblog01033 at
23:40
│
Comments(0)
│
TrackBack(0)