2014年05月14日

競馬の馬券に続き、IBMの裁判でも、国税庁が負けた

先週の金曜日は、
大阪高裁が、
競馬の当たり馬券に関する裁判で、
納税者の主張を認める判決を出して、
注目を集めました

競馬脱税事件、二審も「外れ馬券代も経費」 大阪高裁 (日本経済新聞)

そして、
私も、
このネタで、
久しぶりにブログを更新しました

さて、
先週の金曜日には、
もうひとつ、
税金に関して重要な判決がありました

国税指摘の4000億円申告漏れ訴訟、IBM側が勝訴 東京地裁 (日本経済新聞)

これは、
2010年に発生した事案です

日本IBM、4000億円超申告漏れ 国税局指摘 (日本経済新聞)

簡単に、
この事案の説明をすると、
IBM社が、
グループ内の株式を移動し、
グループの再編をしました

その際に、
グループの株式を売却して、
売却損を計上して、
グループ全体の納税金額を少なくしました

そこで、
国税局は、
この株式の移動は、
経済的な合理性のない租税回避行為だとして、
追徴課税をしました

しかし、
IBM社としては、
確かに、
税金の支払金額は少なくなったけど、
経済的な合理性のある株式取引だとして、
国税局と裁判をしているというわけです

一般的に、
企業が取引をする際には、
利益を最大化するために
コストの抑制をします

このコストには、
当然、
税金も含まれます

したがって、
ある取引を実施して、
税金も安くなった場合に、
税務調査の際に、
国税庁(税務署を含む)と、
争いになることがあります

具体的には、
企業は、
この取引をすることに、
経済的な合理性があり、
「結果」として、
税金が安くなったと主張をします。

一方で、
国税庁(税務署を含む)は、
この取引を実施した理由は、
税金を安くする「目的」で、
経済的な合理性はないと主張します。

したがって、
国税庁(税務署)に、
疑われる可能性がある場合には、
会社で作成する書類や、
会計事務所からの提案書でも、
当該取引の実施は、
経済的な合理性があり、
「結果」として、
税金が安くなるという文章を作成しています

さて、
このIBM社の裁判は、
今回が東京地裁の判決なので、
まだ最終確定ではありません。

また、
争っている金額が大きいので、
今後に注目です


  

Posted by cpiblog01033 at 19:11Comments(0)TrackBack(0)

2014年05月12日

競馬の馬券で、当たった時の税金はどうするべきか?

久しぶりのブログの更新です

すでに、
いろいろなサイトで話題になっている競馬の当たり馬券に関する税金の話です

競馬脱税事件、二審も「外れ馬券代も経費」 大阪高裁 (日本経済新聞)

この事例は、
昨年から、
話題となっています。

さて、
競馬の馬券で、
当たった時に、
税金の申告をどうするべきなのでしょうか?

1・国税庁(税務署)の考え方
国税庁は、
一時所得」であると考えています

上記のリンク先にも、
競馬や競輪の払戻金が、
一時所得であると明記しています。

2・納税者の考え方
納税者は、
雑所得」であると主張しています

3・一時所得と雑所得との相違
では、
一時所得と雑所得で何が違うのでしょうか?

違いは主に2点です。

(1)課税される所得の計算方法

一時所得は、
以下で計算されます。

総収入金額-収入を得るために支出した金額(注)-特別控除額(最高50万円)=一時所得の金額

さらに、
所得税の計算をする際には、
一時所得の1/2に相当する金額を、
給与所得などの他の所得の金額と合計して、
所得税の計算をします。

一方で、
雑所得は、
一時所得と同様に、
収入から経費を差し引けます。

しかし、
一時所得と異なり、
特別控除はないし、
所得税の計算をする際に、
給与所得などの他の所得の金額と合計する金額は、
雑所得の全額です。

つまり、
特別控除と税金計算する所得の金額を考えると、
納税者が主張する雑所得より、
税務署が主張する一時所得のほうが、
所得税がお安くなる計算構造です

では、
なぜ、
納税者は、
一時所得ではなく、
雑所得だと主張しているのでしょうか?

(2)収入から差し引ける経費
収入から差し引ける経費は、
税務署が主張している一時所得のほうが、
納税者が主張している雑所得よりも、
狭いです。

具体的には、
国税庁は、
一時所得の計算において、
収入から差し引ける経費は、
「その収入を生じた行為をするため、
又は、
その収入を生じた原因の発生に伴い、
直接要した金額に限ります。」
と説明しています。

つまり、
競馬の事例においては、
当たり馬券を購入した馬券代のみが、
経費になり、
当たり馬券の払戻から差し引けます。

一方で、
雑所得では、
競馬の事例においては、
当たり馬券を購入した馬券代だけでなく、
はずれ馬券を購入した馬券代も、
経費になり、
当たり馬券の払戻から差し引けます。

つまり、
収入から差し引ける経費を考えると、
納税者が主張する雑所得が、
税務署が主張する一時所得より、
所得税がお安くなる計算構造です

3・今回の判決の背景
大阪高裁は、
競馬の当たり馬券は、
所得税の「一時所得」だけど、
今回の裁判になっている案件は、
長期にわたり、
継続的に、
競馬の馬券を購入しているので、
その所得は、
「一時」ではないと判断しました。

個人的には、
妥当な判決だと思います

4・国税庁(税務署)の対応は、面倒だ
国税庁は、
控訴すると予想されるので、
まだ、
この事例は、
最終確定ではありません。

しかし、
もし、
この事例が、
「雑所得」で確定した場合、
対応に苦慮するのが、
国税庁(税務署)です

具体的には、
競馬の当たり馬券の税金の申告は、
原則として、
「一時所得」であるということには変更はないですが、
馬券の購入頻度や金額、期間によっては、
「雑所得」になるので、
「どれぐらい馬券を購入すると、
一時所得ではなく、
雑所得として申告して良いのか」という質問に、
国税庁(税務署)は、
回答しないといけないことになります。

個人的には、
「いくら」とか、
「何回」とかでは決められないので
「一般的な常識」で、
「一時所得」か否かを判断することになると思います

5・競馬の馬券で生活していたら事業所得になるのか
さて、
もし、
競馬から得られる当たり馬券で生活している人がいたとします。

この人は、
本業として「競馬の馬券」という業種(?)を選択しているので、
理論的には、
事業所得」になると思います。

そして、
税務署に届け出をだし、
会計帳簿を作成すれば、
制度的には、
「青色申告」が認められて、
青色申告控除も認められます。

事業所得ということになれば、
ハズレ馬券も経費となるし、
競馬に関する雑誌の購入や、
競馬場に行く交通費も経費となります。

なお、
この競馬を本業として生活している人は、
「事業所得」になるについては、
国税庁(税務署)の確認を得ていない私見なので、
私の見解に従って申告をして、
損害を被っても、
私は責任を負いませんので、
注意をしてください

  
Posted by cpiblog01033 at 11:26Comments(0)TrackBack(0)