題名:公認会計士VS特捜検察
著者:細野祐二
出版社:日経BP社
価格:1800円(税抜き)
株式会社キャッツという、シロアリ駆除を事業として行っている会社の、
平成14年12月の中間期と本決算において、
有価証券報告書の虚偽記載や株価操縦に加担したのではないかということで、
この会社の会計監査を担当している監査法人の責任者だった筆者が、
東京地検特捜部から聴取をうけ、
最終的に起訴された。
1審と2審は、有罪。
最高裁の判決を前に書いたのがこの本である。
なお、キャッツという会社は、
株価操縦や粉飾決算の疑いにより、
経営が厳しくなり、
民事再生法を適用。
その結果、現在は、生き延びて、事業継続しています。
ホームページは、ここです。
会社の沿革には、過去の暗い歴史は全く書いてありません。
さて、読後の感想です。
世間の仕組みは難しいです。
事実は、1つ。
構成する要素は複数。
この事実を構成する複数の要素から、
いくつかの要素を取り出し、
ある「意図」に沿って、
再構成をすると、
複数の結論ができた。
「有罪」と「無罪」。
最後に決断をする裁判所は、
東京地検特捜部が起訴した案件については、
圧倒的に有罪判決をしている前例に従い、
今回も、有罪判決が下されたということのようだ。
この本を読んでみると、
有価証券報告書の虚偽記載はないように思える。
裁判所は、事実誤認をしていると思う。
一方で、
筆者に脇の甘さもあったと思う。
たとえば、
オーナー社長から相談の謝礼で受け取った現金1000万円を、
自分の机の中に入れておいた点。
すぐに、オーナー社長に返金するか、
監査法人の銀行預金口座に振り込んでおくべきだった。
さらに、
この会社には、「ヤバイ」登場人物が、
全員登場する。
金融ブローカー、証券会社、外資系金融機関、政治家関係者。
今だったら、
速攻で、監査契約を打ち切られるのであろうか。
とにかく、「オカミ」には、勝てない仕組みになっているのが日本である。
私の周辺では、
東京地検は接点はないが、
金融庁や税務署とケンカするときに、
注意をしないといけない相手となる。
税務署については、
現場レベルであれば、
「ケンカのやり方」を習得しているが、
その上の、国税審判所となると、
顧客の利益を守り切れるかというと、
負ける確率が「大」である。
まず、大切なことは、
顧客が、「ヤバイ」状況にならないようにすることだ。
では、顧客がヤバイ状況になったら、
どうするか?
法的リスク、経済的リスク、社会的リスクを検討したうえで、
取れるところは取り、
あきらめるところはあきらめるように、
会社と一体となって、
仕事をすると思います。
ただ、難しいのは、
「これ以上は、ヤバい」という状況になってしまった時。
大きな会計事務所だと、
早い段階で契約解除で、「サヨウナラ」でしょう。
しかし、
当事務所のように小規模な事務所では、
早期の契約解除なんてできない。
逆に、
顧客の経営が、
良い時も、悪い時も、常にサポートしますという決意がないと、
仕事はできない。
結局、
相談をしてもらいやすい関係を常に作っておいて、
顧客が、「ヤバイ」状況にならないようにしたり、
ヤバイ状況から、早期に、かつ、軽症で脱却できるようなお手伝いをするのでしょう。
この本は、
事件に巻き込まれるということは、
どのようになるかがわかる本です。
会社経営者・経営幹部・会計士・税理士は、必読の本だと思います。