「資産除去債務」に関する会計基準が、
2010年4月1日以降に開始される事業年度から強制適用となるので、
日本会計士協会主催の研修に参加しました。
基本的には、
企業会計基準委員会から、
2009年3月31日に公表された「資産除去債務に関する会計基準」と、
「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」の解説と、
これらに関するQ&Aや計算例を、
午後の4時間ぐらいで研修を受けてきたというわけです。
本日の講師は、
30歳代(?)の女性公認会計士。
この女性公認会計士の先生は、
ほんの少しだけ、
私の好きな「小雪」に似ていたからというわけではないですが、
ポイントを押さえた解説と、
美しくて、
聞きやすい声だったので、
解説が分かりやすく、
費用対効果の高い研修でした。
さて、
この資産除去債務に関する会計基準とはなにかというと、
工場やお店などの資産を持つ会社が、
工場やお店を売却、閉鎖、解約する時期などが、
契約や法律である程度分かっているなら、
その売却、閉鎖、解約時に発生することが予想される費用を、
見積もり計算して、
計上しましょうという会計基準です。
この会計基準が適用されることによって、
大きな影響を受けるのは、
工場を所有する製造業や多店舗展開している小売業です。
具体例としては、
ファミリーレストランや牛丼店など飲食業の多業態を展開している株式会社ゼンショーは、
本日(6月11日)付で、
「資産除去債務」についての会計基準の適用で、
平成23年3月期に、
特別損失が3億円、
そして、
特別損失以外の費用が1億円、
合計4億円の費用が増え、
利益が圧縮されるということを発表しています。
「うちの会社は、
工場やお店がないから関係ないや!」と思っている会社もあるでしょう。
でも、
本社や営業所を借りている場合には、
敷金を大家さん(ビルの所有者)に支払っていると思います。
この敷金は、
本社や営業所を解約すると、
原状回復するための工事費用が発生し、
この工事費用が差し引かれて、
敷金が返金されるので、
全額返金されないことが一般的です。
もし、
法律や契約で、
解約時期がわかっているのならば、
この返金されない敷金が、
「資産除去債務」の会計基準の適用対象となります。
なお、
上記の株式会社ゼンショーは、
店舗用地について、
定期借地権の契約により土地の返却時期が決まっているので、
上記の費用などが発生したようです。
したがって、
「本社や営業所をいつ移転するか、
決まっていない!」という会社は、
費用などの計上の必要はなく、
注記だけで良いことになります。
上記の「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」の設例8(27ページ)に注記の文章の参考例が紹介されています。
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当社は、
本社オフィスの不動産賃借契約に基づき、
オフィスの退去時における原状回復に係る債務を有しているが、
当該債務に関連する賃借資産の使用期間が明確でなく、
将来本社を移転する予定もないことから、
資産除去債務を合理的に見積ることができない。
そのため、
当該債務に見合う資産除去債務を計上していない。
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もっとも、
この敷金に関する処理を含めて、
いくつかの点で、
IFRS(国際財務報告基準)との違いが、
この「資産除去債務に関する会計基準」にもあります。
なぜ、
IFRSの強制適用が具体的になっている現時点で、
IFRSと相違点のある会計基準を公表するのかについては、
個人的には疑問ですが、
会社が、
計算して、
公表できるのかといった実行可能性を含めて、
IFRSとの相違点がある基準を決定し、
実行を判断したのだと思います。
なお、
日本基準とIFRSとのおもな違いについては、
新日本有限責任監査法人が公表している小冊子が、
コンパクトにまとまっていて、
お勧めです。
この小冊子の18ページに、
資産除去債務に関する会計基準の日本基準とIFRSとの相違についての記載があるので、
興味があれば見てください。