既に報道されていますが、
経済産業省が、
法人税率を下げることを実現するための財源案を提示しました

経産省が法人税下げの財源案を提示(ロイター)
日本の法人税率は諸外国と比較すると高いので、
法人税率は下げたい

しかし、
法人税率を下げると、
税収も下がってしまいます


そうすると、
税収を確保したい財務省は、
法人税率を下げることに同意しないので、
経済産業省が、
税収を上げるための施策を、
政府税制調査会に提示したというわけです。
しかし、
税収は下がるのだから、
支出も減らそうという論理にならないところが、
役人の発想のすごいところです

さて、
税収を増やす施策が、
いくつか経済産業省から提示されていますが、
中小企業やベンチャー企業にとって一番気になるのが、
繰越欠損金の算入制限です

繰越欠損金の詳細は、
以下の国税庁のホームページを見てください。
青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除(国税庁)
この国税庁のホームページに書いてあることを、
青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除(国税庁)
この国税庁のホームページに書いてあることを、
簡単に要約すると、
ある会計期間で赤字が生じると、
その後の7年以内に黒字が生じた場合に、
赤字と黒字を相殺できるので、
税金の支払金額を少なくできるというわけです。
この制度は、
赤字を出してしまったが、
その後に復活して、
黒字を出した企業には、
税金の支払金額が減るので、
資金的には、
大変に助かる制度です
。

ところが、
今回は、
報道内容を見ていると、
黒字と相殺できる赤字の金額を、
制限しようということのようです
。

私の予想ですが、
相殺できる赤字の金額は、
黒字の金額の5-7割ぐらいが上限となるのではないでしょうか
。

具体的には、
前期に、
赤字を300万円計上してしまったが、
今期は、
100万円の黒字が計上できたとします。
そうすると、
現在の税制では、
今期の税金の対象となる金額
=今期の黒字100万円−前期の赤字300万円のうちの100万円
=0万円
となり、
利益に対する課税は発生しません
。

そして、
前期に発生した赤字300万円のうち、
100万円を今期使用したので、
残り200万円は、
あと6年間繰り越せるので、
その間に、
黒字が生じれば、
その黒字と相殺して税金の支払額を減額することができます。
ところが、
経済産業省が提案した内容は、
黒字と相殺できる赤字の金額を制限する内容です。
例えば、
例えば、
黒字と相殺できる赤字の金額は、
黒字の金額の7割までと制限します。
そうすると、
税制が改正されると、
今期の税金の対象となる金額
=今期の黒字100万円−前期の赤字300万円のうちの70万円(=今期の黒字100万円×7割)
=30万円
となり、
利益が残ります。
したがって、
この利益30万円に対する課税が発生し、
納税をしないといけなくなるというわけです
。

なお、
税制が改正されると、
1年間で相殺できる赤字の金額が少なくなります。
そこで、
現在の繰越のできる期間7年間は、
10年とか、
15年に延長されることが予想されます。
さて、
問題は、
このような税制改正が実現するかどうかです。
個人的には、
実現すると思います
。

このような予想の根拠は、
日本の法人税率を下げることは、
急務だし、
今回の赤字の算入制限などは、
経済産業省が、
提案をしているので、
産業界にもある程度は受け入れられるという「読み」が、
経済産業省にあると思います。
個人的には、
単純に法人税率を下げて、
支出を減らせば良いと思いますが、
財務省が、
「YES」と言わない以上、
このような税制改正が行われることは、
受け入れざるを得ないのではと思います
。

今後も、
税制改正の動向には、
要注意です
。
