2010年12月19日

監査法人(トーマツと新日本)の決算書を見てみる

監査法人は、
内部統制関係の売上が減り、
一方、
法人内の審査体制を強化しないといけないので、
人件費などの経費が増え、
その経営状態は厳しいと言われています

もっと露骨に言えば、
自らの経営状態が悪いので、
他社(お客様)の経営指導をする資格がないとも言われています

さて、
実際に、
監査法人の決算書を見て、
その経営状態を確認して見ましょう。

まずは、
有限責任監査法人トーマツ(以後、トーマツ)の決算書が、
12月16日(木)に、
発表されました

業務及び財産の状況に関する説明書類第43期」を見てみましょう。

トーマツは、
9月決算です。

以下で、
2009年9月期と、
2010年9月期の数値を見てみましょう。

まずは、
貸借対照表です。

資産合計は、
約512億円から約452億円に減少しています。

金額の大きい資産は、
現金預金で、
約161億円から、
約119億円に減少しています。

金額の大きい負債では、
退職給付債務が、
約180億円から約137億円に減少しています。

退職給付債務の減少は、
付属明細書を見ると、
退職者が発生したことのほかに、
企業年金制度への掛け金の支払い等によると書いてあります。

なお、
自己資本比率は、
約33%から約40%に改善しています。

次に、
損益計算書です。

売上は、
約863億円から約801億円で、
約7%減少です。

しかし、
人件費と販売管理費は、
約853億円から約806億円と、
約5%しか減少していません。

そのために、
営業利益は、
2009年9月期は、
約9.9億円の黒字だったのに、
2010年9月期は、
約5.8憶円の赤字となってしまいました

なお、
費用で金額が一番大きいのが、
人件費です。

約687億円から約650億円に約5,4%減少していますが、
売上の減少幅のほうが大きかったということになります。

付属明細書には、
費用の明細が記載されています。

人件費に関しては、
月給に該当する報酬給与は、
約440億円から約460億円に増えていますが、
賞与は、
約75億円から約52億円に減少。

そして、
2010年9月以降に支払う賞与引当金も、
約28億円から約26億円に減少しています。

つまり、
トーマツの従業員のみなさんは、
月給は下がってないけど、
ボーナスが少なくなっていると想像できます。

したがって、
年収も下がっているのではないでしょうか

さて、
このままだと、
トーマツの2010年9月期は、
赤字決算となってしまうので、
保険金を解約して、
約23億円を特別利益に計上して、
税引後の当期純利益は、
約9億円の黒字としています。

税引き後の当期純利益を赤字にしたくないというトーマツの意思が伝わる決算内容です

問題は、
2011年9月期です。

はたして、
営業利益で黒字を計上できるのでしょうか?

売上の増加は難しいでしょうから、
さらに、
人件費を削減するしかありません。

もっとも、
監査法人は、
人が唯一の財産であり、
収益を生む源です

人件費の継続的な削減は、
従業員のやる気を失わせます

そうすると、
従業員全員の一律の年収ダウンを避けるためには、
稼働率の良くない幹部職員や従業員を、
指名解雇する方法を実施するというのが、
リストラの定番コースです。

トーマツは、
どうするんでしょうか

ここで、
トーマツより早く、
指名解雇等のリストラ策を実施した新日本有限責任監査法人(以後、新日本)の決算書を見てみましょう。

新日本は、
6月決算です。

新日本の「業務及び財産の状況に関する説明書類第11期」を見てみます。

顧客数は、
新日本が、
約4,100社、
トーマツが、
約3,700社なので、
新日本が多いということになります。

資産は、
新日本が約576億円なので、
トーマツの約452億円より大きいです。

現金預金も、
新日本が
約161億円なので、
約110億円のトーマツより多いということになります。

しかし、
新日本の自己資本比率は、
21%なので、
約40%のトーマツよりは、
悪いということになります

売上高は、
新日本は、
約984億円。

そして、
原価と販売管理費を差し引いた営業利益は、
約27億円の黒字。

これは、
新日本が、
1期前の平成21年6月期で、
営業利益も、
当期純利益も赤字だったので、
2期連続の赤字を避けるために、
トーマツより早く、
経費削減をした結果です。

なお、
新日本は完全に健康体になったわけではなく、
特別損失に、
約17億円の「構造改革費用」が計上されています。

「構造改革費用」とは、
人員の指名退職などに伴うリストラ費用です。

新日本は、
報酬給与約499億円(売上に対する比率は、50.7%)、
賞与約82億円(売上に対する比率は、8.3%)です。

なお、
トーマツは、
報酬給与約447億円(売上に対する比率は、55.8%)、
賞与約52億円(売上に対する比率は、6.5%)です。

監査法人の最大のコストが、
人件費ということを考えると、
新日本は、
まだまだ賞与を引き下げる余地があり、
トーマツは、
月給部分を引き下げる余地があるようです

さて、
監査法人の経営は厳しい状態ですが、
当事務所も他社の経営について、
コメントしている余裕はありません

会計事務所業界は、
監査法人と異なり、
非上場の中小企業をメインの顧客としているので、
報酬単価も、
顧客数も、
減少傾向。

一般的には、
顧客数が増え、
売上が増えたとしても、
利幅の確保が困難です

12月も残り10日ほど。
がんばろう



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