2011年03月23日

1兆数千億円の借入を予定している東京電力の決算書を見てみる

今回の震災で、
原発の問題を起こしている東京電力が、
三菱東京UFJ、三井住友、みずほコーポレートのメガバンク3行と住友信託銀行など信託4行の7行から、
月内に、
1兆数千億円規模の融資を実施するための調整をしているそうです(毎日新聞)  

借入金は、
最大で、
2兆円規模に増える可能性があるとのことです 

資金使途は、
福島第1原発の事故への対応、
電力供給能力回復のための火力発電所の修理、
火力発電へのシフトに伴う燃料購入などだそうです。

国民の目から見て、
必要なことばかりなので、
是非、
資金調達して、
資金を投入してほしいと思います 

さて、
今回、
福島の原発で問題になっている東京電力とはどんな会社なのか、
決算短信を見てみましょう 

平成22年3月期の決算短信が、
これ です。

売上高が、
約5兆162億円という巨大会社です。

売上高営業利益率は、
5.7%で、
日本企業の平均4%より、
ほんの少し高い水準です。

つまり、
公共サービスを担う会社なので、
大儲けは許されない会社です 

しかし、
平成21年3月期と比較してみると、
売上高は、
14.8%減少していますが、
営業利益は、
324.9%の増加となっています。

独占企業なので、
業績は安定しているのかと思ったら、
意外に、
増減の激しい会社です  

決算短信の3ページ目を読むと、
原料となる原油価格の水準によって、
利益の金額が左右されるようです。

つまり、
平成22年3月期は、
原油価格が下がったこともあり、
儲かったということのようでした。

さて、
東京電力は、
売上を計上するのに、
資産を必要とする会社です 

売上高5兆162億円を計上するために、
資産を13兆2039億円所有しています。

日本企業の平均値としては、
売上金額と資産金額は、
ほぼ同じぐらいの金額です。

したがって、
東京電力という会社は、
売上を計上するのに、
資産を必要とする会社であることがわかります。

そして、
多くの資産が必要となる業態なので、
自己資金だけでは、
必要な資金が不足します。

そこで、
借入金などが増えるので、
自己資本比率は、
18.7%となっています 

日本企業の平均は、
35%ぐらいなので、
平均と比較すると低いですが、
危険水準といわれる10%以下からみると、
ぜんぜん大丈夫ということになります。

したがって、
今回の最大で2兆円となる融資も、
実行可能だということになります。

なお、
この決算短信を発表した平成22年4月30日時点では、
平成23年3月期の売上高は、
6.3%の増加を予想していましたが、
営業利益は、
原油価格の高騰などの要因により、
43.7%の減少を予想していました。

ところが、
平成23年1月31日に発表した平成23年第3四半期決算短信 では、
平成23年3月期の売上高は、
7.4%の増加で、
営業利益は、
原油価格の高騰などの要因により、
12.5%の増加を予想していて、
業績予想数値は、
良くなっています  

この原因は、
こちらの書類 の4ページを見ると、
柏崎刈羽原子力発電所第5号機の発電開始により、
燃料費の減少を見込めると書いてあります 

原子力発電所は、
原油価格次第で、
利益が変動する収益構造を変える役割を担っていたようですが、
今回の原子力発電所の事故で、
会社の野望は、
未達成ということになりそうです。

なお、
この平成23年第3四半期の時点で、
自己資本比率は、
21.3%です。

最大2兆円を借入した場合の自己資本比率を、
推定計算してみると、
18.6%ということなので、
安全性には、
全く問題は生じません 

そういった意味ではすごい会社です。

なお、
この東京電力は、
配当利回りが、
5.72%(Yahoo!ファイナンス) で、
高配当利回りの会社として、
有名でした。

しかし、
今回の原子力発電所の事故により、
期末配当金を、
従来の30円から、
未定にするという発表を本日しました 

東京電力は、
早期に、
原子力発電所の事故をこれ以上拡大しないようにするとともに、
復興のために、
最大限の資金提供をし、
早期に、
電力供給の増大と安定供給をお願いしたいと思います 



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